劇伴レビュー【第8話】七夕に潜む冬の足音(子記 @3KmuiscS )

サウンドトラック発売をお願いする涼宮ハルヒファンのプロジェクトの活動報告
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TVアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」各話劇伴レビュー、2回目のレビュー書かせていただきます。

  • 第8話「笹の葉ラプソディ」について
  • 本エピソード「笹の葉ラプソディ」は、改めて時系列順で放送された2009年版における最初の新作エピソードであった。


    放送当時、新エピソードが放送されるという情報は公式側からはなかったが、2006年の第1期放送版とは違い時系列順での放送であったこともあって、ファンの間では「第1期でアニメ化されなかったエピソードがアニメ化されるのでは?」ということで、最速放送局が映るホテルまで遠征して視聴を試みる酔狂熱心なファンもいた。そう、この頃はまだみな幸せだったのだ……。

    その後2010年の2月に劇場版「涼宮ハルヒの消失」が公開されることになるのだが、本エピソードはその「消失」に繋がる重要なエピソードとなっている。また、「憂鬱」で示されたいくつかの伏線を回収する回でもあり、短編ながら非常に重要な役割を担うエピソードとなっている。


    なお、本エピソードはサブタイトルからもわかるように七夕を題材にしたエピソードではあるため「七夕ラプソディ」と間違えられることも多いが、いい子のみんなはそのタイトルで検索しちゃダメだぞ☆


  • 「今日は何の日か知ってる?」
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    そんなハルヒの台詞から始まる本エピソードの日付は全国一斉七夕デー


    宗教的文化的背景なぞ何のその、それが公的に騒いでいいイベントなら興味がなくても参加するハルヒが「神様にお願いできる」という美味しいイベントを逃すはずもなくSOS団員は七夕イベントに盛大に参加することとなる。


    この冒頭のシーンで使用されている劇伴は「冬の足音」という曲だ。この曲は第1期の劇伴であり、2009年版では第28話にあたる「サムデイ イン ザ レイン」で初めて使用された。TVシリーズ全28話のうち、この2話でのみ使用されている。

    さて、本エピソードが七夕、つまり7月7日のエピソードであることは既に述べた。7月7日というのは四立で言っても夏であるし、気象庁に訊いても夏であるだろう。二至二分で言えば夏至は一応過ぎてはいるがそれでも一万歩譲って次は秋だ。にもかかわらず、このシーンで使用されている劇伴は「冬の足音」なのである。これは何故だろうか?


  • 劇伴のタイトルについて
  • 一般的な話をすると、劇伴いわゆるBGMやサウンドトラックというものはサントラが商品化されるまでは基本的に曲名はつけられていないものだ。


    では、どうやって曲を区別しているかと言うと「Mナンバー」(「M」はミュージックのこと。マイナンバーではない)というものが振られており、その番号で区別されることが多い(実際にはそれに加えて特徴的な曲には通称が存在する場合もある)

    特に昔のサントラなんかで曲名の後ろに「M-01」とか「M-03」といったような表記があるのを目にしたことがある人は多いかもしれない。メロディーなどのモチーフを元にアレンジを加えたものについては、さらにその後にアルファベットなどを付けて区別することもある。


    TVアニメの劇伴というのは事前に使用シーンがはっきりと決まっていないことも多い。そのため、最後にタイトルをつけるほうが実際の使用シーンにあったタイトルを付けられるという側面もあったりする。

    とはいえ、ある程度汎用的な劇伴を用意し、それを使いまわすのが一般的なTVアニメ劇伴では実際の使用シーンが複数ある場合サントラに収録された曲名が全てのシーンとはマッチしていなくても不思議ではない。


    しかし、ここで重要なのは本エピソードが2009年に新たに作られた新規エピソードであり、第1期の劇伴である「冬の足音」もそれより前に曲名が付けられた状態で世に出ているということだ。


  • 第1期の劇伴が使われた理由
  • 勿論、第1期の劇伴を後続シリーズで使うということ自体は珍しくないことだ。実際、この後のシーンも「いつもの風景」「好調好調」と第1期の劇伴が続く。


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    ©2006,2007,2008,2009谷川流・いとうのいぢ/SOS団


    2009年版の新作エピソードでは一部第1期の劇伴がこのように使用されているものの新劇伴が大量に書き下ろされており、しかも半分以上が実質ほぼ同じ話という状況にも関わらず1回限りの使用にとどまるものが多い。


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    ©2006,2007,2008,2009谷川流・いとうのいぢ/SOS団


    これほど大量に新規劇伴が書き下ろされており、かつ1回のみの使用曲も多くある中であえて第1期の劇伴が使われる理由は何か。


    一つは第1期のエピソードに紛れるかたちで本エピソードが入ることに合わせての「繋ぎ」の役割だろう。

    「いつもの風景」「好調好調」は第1期でも多く使用された劇伴であり、曲自体は覚えていなくとも視聴者にとって耳馴染みのある曲だ。そういう曲が流れることで、新作エピソードと既存のエピソードとの間の「3年間」の隔たりを緩和してくれる。


    だが、「冬の足音」は何なのか?


    なぜわざわざ第1期で1回しか使われていないこの劇伴をここで使ったのか?


  • 「冬の足音」の正体

  • 第1期の曲で他に合いそうな曲がなかった、音響監督の鶴岡陽太さんがこの曲を好きで使いどころを探していた、せっかくトランペット入れたのに第1期では抜かれて使われたから供養の意味で……ありそう。凄くありそう。


    だが、ここで「サムデイ イン ザ レインで使われた」ということを思い返してみよう。(既に大多数の方はは十数行前からお気づきだろう。ここまで気づかないフリをしてくれてありがとう)


    現在TVシリーズ最終話である「サムデイ イン ザ レイン」はアニメで書き下ろされた「何も起こらない」回であるが、その後の「消失」直前のエピソードということもあり、「消失」に繋がる要素が多く散りばめられている。この作品における「冬の足音」は単純な季節としての冬の到来という意味だけでけでなく「消失の足音」と言い換えることも出来るだろう。

    そして何を隠そうTPDDを隠そう「笹の葉ラプソディ」「消失」に繋がる重要なエピソードだ。 繋がるどころか、この物語の裏でまさに「消失」の物語が足音を忍ばせながら進行している。

    何を隠そう居場所を隠そう「サムデイ イン ザ レイン」における「足音」が何かが訪れる予兆としての足音だとすれば、何を隠そう身元を隠そう「笹の葉ラプソディ」の「足音」は舞台裏で聞こえている足音だと言えるだろう。(あ、夜間に汗だくの男子高校生が物陰から女子中学生へ声掛けをする事案が!

    この2つのエピソードがまだ見ぬ「消失」へと繋がることを暗に示す劇伴として、「冬の足音」が裏のモチーフとして使われているのだ。


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    ©2006,2007,2008,2009谷川流・いとうのいぢ/SOS団

    「あんたってやつは、今日がどんな大切な日なのかわかってないのね」


  • おわりに

  • わかってる。わかってるから。


    前回アバンだけで長々と書いたにもかかわらず今回はアバン1曲目のしかもタイトルについてしか語ってないのにこの分量。

    いや、僕だって16年という月日に思いを馳せるハルヒのシーンで流れる物憂げな「短冊の向こうに」について語りたいですよ。「消失」でのエリック・サティを意識しているような印象派テイストのこの楽曲は「消失」との繋がりを示唆してるんじゃないかとか(語った


    少し言い訳をすると、僕は劇伴曲もタイトルが重要だと思っている。むしろ曲の一部でもあり作品のシナリオの一部でもある劇伴曲のタイトルこそ重要だと思っている。映画などでキャッチコピーを考える人が専門でいるように、劇伴曲のタイトルを付ける人が専門でいてもいいくらいに思っている。(Mナンバー自体は制作意図考察に使えるので知りたいけれども)

    前回「名曲はイントロから名曲」というような話もしたけれど、「サントラの名盤は収録曲名見ただけでも名盤」みたいに言われるくらいになればいいと思いながらこの文章の締めとしたい。

    以上!



■著者紹介

子記(@3KmusicS)と申します。自分が深夜アニメを観たり、その音楽を聴くようになったきっかけである「ハルヒ」の劇伴を是非とも形にしたいと思い、こんなことをやっております。同時に「ハルヒ」という作品やその音楽についても語り継がれていけるように貢献出来たらと思っています。

■ハルヒシリーズで好きな劇伴曲

「ハルヒの想い」
「ある雨の日」
「短冊の向こうに」
笹の葉とサムデイしかない……!

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